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最高裁判所第三小法廷 昭和39年(オ)868号 判決 1968年9月03日

上告人

池島幸治

代理人

吉川大二郎

渡辺弥三次

被上告人

丸山臣一

代理人

丸山郁三

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人吉川大二郎、同渡辺弥三次の上告理由一ないし四について。

原審が確定した事実によれば、上告人は、被上告人が本件(イ)の土地の所有権を取得した日以降、被上告人に対抗しうる権原を有することなく、右土地の仮換地および換地上に本件建物を所有して、同土地を占有している、というのである。そして、被上告人が上告人の従前同土地について有していた賃借権が対抗力を有しないことを理由として上告人に対し建物収去・土地明渡を請求することが権利の濫用として許されない結果として、上告人が建物収去・土地明渡を拒絶することができる立場にあるとしても、特段の事情のないかぎり、上告人が右の立場にあるということから直ちに、その土地占有が権原に基づく適法な占有となるものでないことはもちろん、その土地占有の違法性が阻却されるものでもないのである。したがつて、上告人が被上告人に対抗しうる権原を有することなく、右土地を占有していることが被上告人に対する関係において不法行為の要件としての違法性をおびると考えることは、被上告人の本件建物収去・土地明渡請求が権利の濫用として許されないとしたこととなんら矛盾するものではないといわなければならない。されば、上告人が前記土地を占有することにより被上告人の使用を妨害し、被上告人に損害を蒙らせたことを理由に、上告人に対し、損害賠償を命じた原判決は正当である。叙上と異なる見地に立つて原判決を攻撃する所論は採用できない。

よつて、民訴法三九六条、三八四条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(五鬼上堅磐、同柏原語六は退官して、評議に加わらない)(横田正俊 田中二郎 下村三郎)

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